2018/05/03

遺産は放棄する、と伝えるだけでは足りない。

 

この記事を書いている人 - WRITER -
石川宗徳
埼玉県をこよなく愛する司法書士・相続診断士。汐留司法書士事務所代表。一般社団法人さいたま幸せ相続相談センター相談員。
得意分野は会社法と相続。会社の相続もご相談ください。
趣味はフットサル(走れない)と将棋(弱い)
好きな食べ物は牡蠣とワッフル(セブン&アイ)
東武動物公園に稀に出没する。
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「私は遺産は要りません。」

相続の場面において相続人が、相続に関わりたくない、生活していくだけの資金はある、被相続人に生前に良くしてもらった、他の相続人が被相続人の面倒を最後までみた等の様々な理由により、遺産を受け取らないという選択をするケースがあります。

このページでは、遺産を放棄すると相続人に伝えるだけで済ませるリスクを紹介しています。

相続放棄と「遺産を放棄します」の違い

遺産は放棄すると他の相続人に伝えたのに、被相続人の債権者から返済の請求がきたという話、他人事ではありません。

債権者が、遺産を放棄したことを知らないからそれを伝えれば大丈夫かというと、大丈夫ではありません。

他の相続人に対する「遺産を放棄します」は、残念ながら「プラスの)遺産を放棄します」という意味でしか捉えられない可能性が高いといえます。

相続放棄は家庭裁判所に

相続放棄は法律で定められた手続であり、他の相続人や債権者等の第三者に大きな影響を及ぼす行為であるため、一定の手続をしっかりと踏むことが必要です。

単に「遺産は要りません」と他の相続人に伝えるだけでは、法律で定められた相続放棄の要件を満たしておらず、相続放棄をしたことになりません。

相続放棄は、自分が相続人であることを知った時から3ヶ月以内に管轄の家庭裁判所に申述する必要があります。

相続放棄をしたと思って3ヶ月が経過してしまった

「遺産は要りません」と他の相続人に伝えたことにより、相続放棄をしたと思っていて3ヶ月の熟慮期間が過ぎてしまった場合、以降相続放棄をすることが難しいかもしれません。

相続放棄と債権者

相続放棄を行えば、被相続人の借金を返済する義務はなくなります。

しかし、上記のとおり「遺産は要りません」と他の相続人に伝えるだけでは、被相続人の債権者は相続人全員に、被相続人に貸していたお金を請求することができます。

借金は相続人のうち1名が払うと話し合いで決めた

それでは相続人全員で、被相続人の借金はAさんが返済していくと決めた場合はどうでしょうか。

このようなケースでは、債権者がAさんだけが返済することに納得して合意をすれば、他の相続人は借金の返済義務から免れますが、債権者の合意が得られていないのであれば、債権者は相続人全員に返済を請求することができます。

相続と詐害行為取消

相続人が自身も借金をしている場合、当該相続人の債権者からすると遺産を相続することにより当該相続人の資力が増すことになり、返済してもらえる可能性が高くなります。

「遺産は要りません」と他の相続人に伝える行為は、そのチャンスを喪失させ当該相続人の債権者の期待を害していることになります。

そのため、債権者は当該相続人の「遺産は要りません」を取り消す権利があります。これを詐害行為取消権といいます。

取り消されると他の相続人も困る

他の相続人からしても、後から「遺産は要りません」が取り消されると困ったことになってしまいます。

遺産分割協議をやり直したり、自分の相続分が減る可能性があるからです。

なお、相続財産の全体がマイナスとなっている場合は、上記は当てはまらない可能性があります。

相続放棄と詐害行為取消権

それに比べて、相続放棄は詐害行為取消権の対象とはなりません。

相続放棄のような身分行為は、詐害行為取消権行使の対象とならないとする判例があります(最判昭和49年9月20日)。

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埼玉県をこよなく愛する司法書士・相続診断士。汐留司法書士事務所代表。一般社団法人さいたま幸せ相続相談センター相談員。
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